布留川 勝の人材育成の現場日記

今日は女性活用ではない「ダイバーシティ」の話

2013/12/24

グローバル人材育成

ダイバーシティ

ダイバーシティ推進が女性活用と同義になっていることも日本企業ではまだまだ多いが、ダイバーシティとは国籍・文化、価値観、キャリア、世代などを含んでいる。従って、グローバル社会ではより広い意味でのダイバーシティ対応力の必要性は増々高まっている。

今回は、日頃、頻繁に海外出張に行くビジネスパーソンであっても盲点になりがちな、ダイバーシティ対応力向上のための基本姿勢を、事例とともにご紹介したい。

大手メーカーの新入社員A氏は、イギリスで3ヶ月間語学研修を受けてきた。ポーツマスで1ヶ月間、その後、ロンドンで2か月間、異なる語学学校に通うプログラムだ。A氏の高い英語力もあり、序盤1ヶ月は順調に進んだ。

授業風景1

しかし、ロンドンに移ってから間もなく、A氏は「ポーツマスに戻りたい・・」と強く思い始めた。ホームステイ先が合わないのだと言う。詳しく事情を確認してみると「ポーツマスのホストファミリーの方が親切だった。ロンドンのファミリーとは打ち解けにくく、ミスコミュニケーションが頻発している。ついつい、ポーツマスでの生活を思い出してしまう」とのことだった。

海外研修をサポートしていると、このような声を聞くことは少なくない。
原因を一言でまとめると、ある国の一つの都市・地域での経験からその国の傾向を一般化してしまっていることである。

具体的に説明すると、以下の通りだ。

一般的な話だが、イギリスの中でも小規模都市(例:ポーツマス)でのホームステイの場合、ホストファミリーは、大規模都市(ロンドン)に比べ、留学生と密にコミュニケーションを取ろうとする傾向がある。彼らは「留学生と過ごす時間」の優先順位が高いと言える。一方、ロンドンのファミリーは「留学生と過ごす時間」と同様に「双方のプライベート」も重んじる傾向がある。

A氏の場合、ポーツマスではその文化に合わせ、可能な限り、ファミリーと生活を共にした。ファミリーもそれを喜んだからだ。A氏の中で、ホームステイ生活を充実させる「スタンダード」が出来上がった。

ロンドンに移ったA氏と新しいファミリーの間でミスコミュニケーションが生じたのは、ポーツマスで作り上げた「スタンダード」を、そのままロンドンへ持ち込んだためだ。ロンドンのファミリーは、A氏に、共同生活と双方の時間、両方を大事にしてもらいたかったのである。ロンドンのファミリーとも良い関係を築こうと思ったA氏の行動が、皮肉にもミスコミュニケーションを生み、積もり積もって最終的に「ポーツマスへ戻りたい」という気持ちを芽生えさせたのだ。

このように、同じ国であっても地域によって雰囲気が大きく変わる場合が多々ある。例えばイギリスであれば、大都市、地方都市の違いはもちろんのこと、民族的な違い、地域的な違い(イングランド、スコットランド、ウェールズ等々)がある。一つの国だからといって一括りには出来ない。国籍、人種などから分かるのは、あくまでも相手の平均的なイメージに過ぎない。ダイバーシティ対応力は、ステレオタイプやある特定の過去の事例だけで相手を決めつけず、その「人」を見てコミュニケーションを取る。 それを数十、数百人の相手に対し行うことで、磨かれていくものである。
仕事柄、海外赴任で成果を収めた方々からお話しを伺うことが多いが、彼ら、彼女らに共通するのは「人に向き合う」姿勢だ。

これから海外に出る日本人ビジネスパーソンは、ぜひこの姿勢を意識して、日々積極的にコミュニケーションに臨んでもらいたい。

A氏のその後であるが、帰国前には無事問題を解決できたそうだ。A氏は、当社が行った留学前研修で、アサーティブネスを学んでいた。
アサーティブネスとは、相手も自分も「Win-Win」の状態であることを考えて行動するマインドとスキルである。今回の場合、感情的になってファミリーを非難・攻撃するのではなく、まず自分自身の素直な気持ちを伝えて、ファミリーと一緒に問題解決していこうという姿勢を示すことで相互理解を促進させ、状況を好転させた。学びを上手に活かしてくれたことを、運営側として大変喜ばしく思う。海外研修を経て、身を持ってダイバーシティ対応を学んだA氏の今後に期待である。

授業風景2

余談だが、弊社ディレクターの福田聡子が、多様な人種、宗教が混在しているインドの出張を終え、帰国した。民族、言語の多様性などダイバーシティを地で行くインド。そこでの研修は、最近注目を浴びているフィリピンでの語学研修とはまた異なる魅力がある。インド海外研修の最新情報にご興味おありの方は、ぜひお気軽にご相談いただきたい。

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