グローバル人材育成に関して、私がもったいないな、と思う制度を持つ企業が多々ある。
それはMBA派遣と英会話研修のコンビネーションである。あまりに両極端に走りすぎている。
ごく少人数の若手をビジネススクールに派遣しMBAを取得させる。その他の社員には英会話研修を受講させる。これで予算規模は5000万円以上は確実である。
これで果たして投資効果が見込まれるのか?
私にははなはだ疑問である。
MBA派遣に関しては1千万円以上の留学経費と留学中の人件費に加え、仕事をしていないわけであるから機会損失コストを考えれば1名5000万円以上の投資である。
そして、二人に一人は辞める。
元々欧米ではMBAは個人のキャリア開発として使われており、企業派遣の例はむしろまれだ。こうした違いが企業のねらいとミスマッチを起こしている。
英会話研修に関しても、見直しをする企業が急増している。
理由は、やはり投資効果の低さである。週1回2時間のレッスンを半年続ける。
受講者はその2時間のみ英語を学習する。半年で50時間程度である。
週1回2時間以外にも自己学習すべきだが自発的に取り組む社員はごく一部である。
なぜ英語を学ぶのか、何を目指すか、日本以外の国の人材はどんなスキルとマインドなのかを考えず想像もせずただレッスンを受ける。
当然効果は期待できない。
1昨日、私が現場を訪れた企業は、次世代リーダーに積極投資している。
1年間のグローバル研修をすでに3期終了し、50名弱が『個のグローバル化』へと力強く前進している。
加えて現在受講中の第4期生16名が卒業すれば、60名強の次世代リーダーがグローバル化するわけだが、これは組織にとって大きなインパクトがある。
MBA取得者がごくわずかに社内に点在し、知らないうちに転職していってしまう制度との、社内への波及効果の差は自明だ。
逆に今回訪れた企業では、同世代の優秀で次世代を担う仲間が各主要部門におり、
国内にいて仕事を続けつつ、週末学んでいる姿は周囲への影響力もある。
そして、毎年継続していくことで層となり、厚みも増してきている。
まさに面展開かつ立体的にグローバル展開を担える人材が育っていく。
ここに大きな意味がある。
この企業の場合は、研修が終わっても、フォローアップ研修があり、更に自分自身を高められる。
今回はそのうち15名の卒業生が、フォローアップ研修としてグローバルビジネスの1日の流れをシミュレートしながら、スキルを統合的に運用する体験を持つプログラムを受講した。
この日、ニュージャージーでの7年の赴任から戻ってこられた方がオブザーブに同席されていたのでご感想を聞いてみた。
「私が赴任する前にこんな研修が受けられたら、現地での立ち上げがどれだけ違っていたかと本当に思いますよ」
赴任を経験された方が弊社のプログラムをオブザーブや参加されると多くの方から同様のご感想を頂く。
しかし、このようなグローバル研修の検討の際、研修後の処遇が難しいということで実現に至らないケースが多々ある。
例えば、研修後に海外赴任させるといったことを制度化できないということだ。
しかし、この企業では、最近では現地化を進める意味でも「本社から人材を駐在させずにリモートでマネジメントする、ケースがかなり増えてきていますよ」とのことであった。
ますます面展開でグローバル人材育成を推進していくことの意義と投資効果は高まっていると考えている。
写真はフォローアップ研修のひとコマ。