布留川 勝の人材育成の現場日記

苦戦するグローバルリーダー育成

2006/08/22

グローバル人材育成

d0ea7dd8.jpgグローバルリーダーの育成に関する問い合わせが増えている。
『社内を見回したがグローバルで通用するリーダー層が薄い。外部からプロフェショナルを採用する手もある。しかし、ホンネは社内事情に詳しく信頼のできる人物で且つグローバルでも通用する役員、事業部長クラスが欲しい』。
ここ数年この問題が、各社の経営課題の上位にあがってきていると聞く。事例を伺うと外部からのプロフェッショナルの採用は、MBAホルダーの退社と似通った理由で長続きしないことが多いようだ。プロフェッショナルやMBAのスキルや知識は必要であるが、現実的にはいいとこ取りはできない。彼らの能力を最大限に活かすには、待遇や条件面の要求や物事へのアプローチも合わせて受け入れるのが筋である。しかし、それが伝統的な企業の組織風土と不協和音を起こしてしまう…

大手企業がトップ10校へ何名送り出せるかを競っていたバブル崩壊直前の88-89年頃、私はクライアントの人事担当者数名とハーバード、スタンフォード、MIT、ウォートンなどを視察し実態を調査したことがある。その頃は、日本型経営が世界の成功モデルとしてケース化されていた。
しかし振り返れば、その当時のMBA派遣の目的は長期的なビジョンを持ったグローバル人材育成というより、MBA制度があるという採用対策と英語のできる若手社員を育成する、というのが実態だった。企業からのMBA派遣の年齢層は27-32歳。もし、その頃の派遣MBAホルダーが2006年現在そのまま在職していると45-50歳になっている。まさに、前述した「社内事情に詳しく信頼のできる人物」になっている世代である。残念ながら彼らの多く、特にプロフェッショナル志向の人材の多くは社を去っていった。
そして今現在も、MBAホルダーの退社問題はいまだに衰えていないようだ。MBAホルダーが退社を決断する理由は大きく分けて《不満型》と《挑戦型》の2種類である。不満型は、MBAスキルを使いにくい企業風土や組織に対する不満を持ち、挑戦型は外に飛び出して自分を試してみたいという欲求を抑えられなく退社する。実際、退社までいってしまうケースはその混合型が多い。

構造的には、ここまで述べた理由も含めて日本企業においては、グローバルリーダーと呼ばれる人材が枯渇している。MBAを取得していればグローバルリーダーになれる訳ではないし、実際MBAホルダーではないが十分にその役割を担っている人材も少なくはない。ただ、上位のビジネススクールがグローバルレベルで成果を出せるプロフェッショナルの育成に一役かっていることも事実である。

そんな中、6月から7月にかけてビジネスクールのエグゼクティブプログラムの調査もあり、米国(ボストン、ニューヨーク、サンフランシスコ)を2週間回ってきた。やはり、グローバルリーダー育成の最前線は米国ビジネススクールだと再認識した。その現地報告を次回お伝えしたい。

(お知らせ)
弊社トップページ(http://www.globaledu-j.com/)でも紹介しているが、9月8日(金)のグローバル人材育成研究会(http://www.globaledu-j.com/e/e6.html)ではUCバークレー(Haas School of Business)のAndrew Isaacs教授をお招きしている。内容はMOT(技術経営)も含めたエグゼクティブプログラムの事例紹介である。また、私の方からは海外研修プログラムの種類と導入のノウハウをわかりやすく解説させていただく予定なのでのぜひご参加いただき皆様からのご意見も頂戴したい。

写真はAndrew Isaacs教授。

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