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去る10/29(月)と11/9(金)に、スイスに本拠を置くビジネススクールIMDとグローバル人材育成研究会を開催した。
10/29(月)は、「最高の技術、ミニマムのコストで最大の学習パフォーマンスを実現するIMD Online Learningの最新動向!」をテーマにデジタルラーニング部門・ディレクターであるポール・ハンター氏と、IMD北東アジア代表である高津氏にご登壇いただいた。
11/9(金)は「日本企業/人材は実際、世界からどう見えているのか?IMDグローバルリーダー育成最前線から課題と解決策を紐解く!」をテーマに、元学長のドミニク・テュルパン氏(現Dean of External Relations)、IMD北東アジア代表の高津氏と一緒に対談形式で、参加者の皆様からの質問を元に開催した。
この2回のG研を通して印象的だった3つのことについて書いていきたい。
① 経営戦略を実現するためのビジネススクール派遣か?
人事部は、企業の経営戦略を人材の観点から推進する役割を担っている。日本企業がビジネススクールに参加者を派遣するとき、時々起こるのが参加者自身が「なぜ自分が選ばれたのかがいまいちわからない。だから自分がそのプログラムを通じて何を期待されているのかがいまいちわからない」という状態だ。もちろん、選抜された優秀なメンバーであるので、会社からの期待だということ、ビジネススクールでのネットワークを生かしてほしい、といった基礎的な会社からの期待は理解している場合が多い。
しかし、なぜ自分が選ばれたのか?具体的にこの後のキャリアパスはどうなるのか?ということについては、示されない場合が多いし、企業としても明確な答えがない場合も多い。私や当社専務の福田は、ビジネススクールの派遣者に対して、派遣前の心構えを含めたオリエンテーションを行うことも多いが、派遣目的ははっきりすればするほど良い。ビジネススクールへの派遣は投資である以上、どのような投資で、どのようなリターンを得たいのか?を明確にする必要がある。そして、それを明確にして派遣者に伝えることが、投資効果を高めることになるのだ。
また、IMDテュルパン氏と高津氏からは、最近の傾向として、組織から一人だけをプログラムに派遣するのではなく、組織に前向きなインパクトを与えられるように複数人を派遣するという例もご紹介いただいた。組織を変えていくために一人だけでは心もとないが、仲間がいれば変革も起こりやすい。
② 安全な学習環境を確保するIMD
ビジネススクールは世界中にあって、それぞれの学校がユニークな特色を持っている。今回のG研で改めて感じたのは、IMDは、親密で安全な学習環境が整っているという点だ。プログラムの参加人数は90人ほどで、多すぎず少なすぎず、有意義なネットワークを構築するのには最適な人数だ。また、英語に関してはノンネイティブの参加者が多く、日本人にとっては心理的にも議論に入っていきやすい。様々な仕組みによって、参加者の発言を受け止めてくれる安全な学習環境が整えられているのだ。これは、IMDオンラインラーニングについても同様で、バディ制度やコーチがつくといったように、個人の学習が最適化されるような思想で設計されている。
③ 日本はこれからどう発展していくか?
テュルパン氏は、親日家で日本や日本のリーダー育成についても理解が深い。
そんなテュルパン氏には、日本はゆっくりハード産業からハード&ソフト産業へと変革してきているように見えるという。過去25年間はブルーワーカーのマナジメントに費やしてきた日本だが、これからはどうホワイトカラーをマネジメントしていくのか?ダイバーシティの力をどうパワーに変えていくのか?が課題だという。
ビジネススクールは、世界最高峰の異業種交流プログラムだ。そこで得られるネットワーク(人脈)、知識、自身のリーダーシップ内省、そして刺激は、何物にも代えがたい。会社の未来を創るためには必要不可欠なプログラムだ。ただ、その派遣準備・設計には十分な時間とリソースを投じないと投資がムダになってしまうため、どのようなリターンを得たいのか?明確にして、入念な準備のもとに参加者を派遣することが重要だ。
左:IMDドミニク・テュルパン氏、高津氏と一緒に
右: IMDポール・ハンター氏、高津氏と一緒に