先日、第103回グローバル人材育成研究会
『活力ある組織作りのためのセルフエンパワーメント
~自らの強みと思いを活かしたリーダーシップの発揮~』を開催した。
第1部では私から、リーダー人材の中核要素である、
「ビジョナリ―シンキング」と「セルフエンパワーメント」についてご紹介した。
「ビジョナリーシンキング」とは、ひらめきの右脳と思考力の左脳が相互に刺激しあいイノベーティブかつ壮大な構想を練る能力であり、訓練して身につけることが可能である。
2008年に拙著「パーソナル・グローバリゼーション」を執筆する際に、グローバル人材の中核の要素は何なのかを自問自答したがなかなか出てこなかった。そこで私は過去に私に影響を与えた人物について思い起こし、そのイメージを膨らませることから始めようと考えた。
その時に「ビジョナリーシンキング」という概念が浮かんだ。私の人生の中で最も記憶に残り、影響を与え続ける人たちの共通点は、「ビジョン」と「思考力」だった。何をしたいか、何のためにそのことをするのか、そしてどのようにそれを成し遂げていくのかがほとばしるように伝わってくる人たちこそ、これからの時代をひっぱていくリーダーである。
そして、ビジョナリーシンキングをサステイナブル(持続可能)にするのが、「セルフエンパワーメント」という概念である。一部の類いまれなビジョナリーシンカーも常に外部からの妨害や自分自身の限界などビジョンを達成する過程で多くの障害にぶつかる。
そんな時に、その障害を跳ね返すことができる能力がセルフエンパワーメントである。すなわち、自分自身をいかなる状況においても最高の状態に保ち続けることができる能力である。
最近よく使われる言葉「レジリエンス」とは、心身ともに活力にあふれ苦しい状況に追い込まれても挽回する能力のことであり非常に近い概念である。
「ビジョナリ―シンキング」と「セルフエンパワーメント」は一対であり、相互で刺激しあい、補完しあう関係でもある。
「Connecting the Dots(点と点をつなげる)」
セルフエンパワーメントの理解を深めていただくために、スティーブ・ジョブズのスタンフォード大学での卒業式のスピーチをご覧いただいた。
ジョブズは、スピーチでこのように話している。
「未来に先回りして点と点をつなげることはできない。
君たちにできるのは過去を振り返ってつなげることだけなんだ。
だから点と点がいつか何らかのかたちでつながると信じなければならない、、、」
過去に振り返ってしか点をつなげることができないということは
過去に点を作っていなければつなげるものがないということである。
大学を中退し、必須授業に出る必要がなくなったジョブズは、興味があったカリグラフィー(書道)の授業を取ることを決める。
それが、後にマッキントッシュを作る時に蘇り、美しい活字を再現することにつながったのである。
もちろんジョブズはそれを予想し、行動したわけではなかっただろう。
しかし、その後振り返ってみて、その点の繋がりに気づいたのである。
人間誰しも、「なぜこれをやる必要があるのか?」、「いつ役に立つのか?」と、思う場面があるだろう。しかし、日々諦めずに自分をエンパワード(強化)し続け、点と点が繋がると信じることが大切である。
そして、その一つ一つの点を丁寧に大きな点にしていくことが、自分自身のキャリアに繋がっていくのである。
第2部の野呂講師のパートでは、変化の中で主体的に仕事に取り組むためのセルフエンパワーメント研修の一部をご体験いただいた。
野呂さんの存在感とファシリテーションの巧みさは相変わらず素晴らしい。
野呂さんには創業数年後からリーダーシップとセルエンパワーメントに関して様々なプロジェクトに
ご参加いただき、私自身も多くを学ばせて頂き、クライアント企業から高い評価をいただいている。
まず始めにマネージャーとリーダーの役割の違いついて考えるワーク。
下記がご参加者から出ていた意見である。
<マネージャーの役割>
・現状を管理、維持する
・失敗しないことが大切
・100点を目指す
・決められたことを自発的にやる
・目標を達成することが重要
<リーダーの役割>
・見えていないものを創造していく
・成功することに焦点をおく
・周りを引っ張り巻き込んでいく
・0を1にする力がある
・主体性がある
・目標を達成するのではなく、目標を作っていく
組織には、もちろんどちらの役割も重要である。
しかし、今の時代に求められるのは、やはり”リーダー”のメンタリティである。
既にマネージャーとしての役割を果たしているのであれば、少しずつリーダーの役割に移行していくことが求められるだろう。
次に、コアとスペースの演習一部をご体験いだいた。
コアとは、「その仕事を担当者としてやらなければいけないこと」、「その役割の最低限の責任を果たすようなこと」である。
スペースとは、「やらなくてもよいが自分の意思で行動できること」、「流れをよくするために、または、もっと良くするために、変化に対応するために、自分から始めること」を意味する。
まずは個人で今の仕事に対してのコアとスペースを考え、その後気づいた点を共有いただいた。
下記が実施にワークを体験してみての皆様の感想だ。
・やりたいこと(スペース)はあるが、まだまだやれていないことに気づいた。
・コアをしっかりやっていくことで、スペースもできるようになると思う。
・コア業務を他の人に任せつつ、スペースに取り組みたいという思いが出てきた。
・スペースを考えている自分が楽しい。気持ちが前向きになり、前に進む感覚があった。
「個人的な信念や自分の哲学は何か?」を見つけ出し、スペースでやっていき、
それが組織のビジョンと重なっていればその組織と共存できるというのが野呂さんの考え方である。
そして、コアを引き受けながらスペースも同時にやっていく、そういう人材が国内でも海外でも活躍できるのである。
今回参加いただいた方が、研究会終了後にこんな発言をされていた。
「スペースはまるで『年輪』のようである」
それを聞いて、まさにその通りだと思った。
それぞれのレベルで、スペースに一歩踏み出し、その積み重ねが、その人の「生き様」となり、
それらを深く考えみて、次に進むことで自分のキャリアにもリーダーシップにもつながる。
「組織の成長」とは「個人の成長の積み重ね」であるというのもこのワークショップの大事なメッセージである。
今回は私としても、個人の成長と主体性の関係性について多くを感じ、理解を深める機会になった。
<終了後に野呂講師、ディレクターの福田と一緒に>