私は同席できなかったのだが、4月26日(木)に開催されたG研の様子を当社コーディネーターからの報告を基に、皆様にもお伝えしたい。
「日本人がグローバルな世界で、最も向上すべきスキルはなにか」と問われたとき、皆さんならなんと答えるだろうか。
「英語力」が思い浮かんだ方も多くいらっしゃるかもしれない。ただ、私たちは、「英語力」が多少低くとも、海外で、日本人ではないビジネスパーソンとも巧みにやりとりをする方々をたくさん拝見してきた。こういった方々が優れている点はどこにあるのか、今回はその答えとなる「ディベート力」に注目した。
4月26日(木)に、第165回G研 河原崎圭市講師による「グローバル人材の武器としてのディベート応用術~戦略的コミュニケーターの存在がビジネスの明暗を分ける~」を開催した。河原崎講師、「5年経った後も印象に残る講師」と称されるほど、ハイインパクト・ハイスピードな講師なのである。また、今回は日英のバイリンガルで行っていただいたが、さらに中国語でもこのセッションができるという稀有な存在である。
「ディベートとはコミュニケーションの総合格闘技」と河原崎講師は言う。
確かに、ディベートは以下のような様々なスキルを即時にしかも、同時多発的に発揮できなければならない。
・プレゼン力(相手に伝える力)
・思考力(短い時間で相手の意見を受けて考えをまとめる力)
・割込力(相手のペースに引き込まれず意見を瞬時に発する力)
・反論力(反対の意見を臆せず発する力)
・傾聴力(相手の意見に耳を傾ける力)
・理解力(相手の論点を捉え、構造で整理する力)
・質問力(必要な情報を引き出す力)
・メモ力(重要な点を整理して、メモをする力)
今回は、1対1、また、グループ対抗のディベート を参加者の方々にご体験いただいた。
「ディベート」、ましてや、「コミュニケーションの総合格闘技」と聞くと、相手を打ち負かすスキル、論破するスキルが最重要だと想像されるだろうか。実は、今回のG研でこんな話があったそうだ。
ある参加者から「日々の社内でのコミュニケーション、クライアントとの交渉などの場面で、ディベートが生きる要素はどの部分か?」というご質問があり、それに対する河原崎講師の答えは「聞く力」。
「聞く力」は「相手が一番言いたいことはどこか、それを支えるポイントはどの部分か」と相手の理論構造を正確に分析するスキルである。どうしても相手を説得させるとき、言葉を重ねてしまう。だが、より効果的なことは、相手の論点をしっかりと見極め、そこをシャープな言葉で突くことなのだ。
また、ディベートは、スキル面だけでなく、マインド面にも大きな影響を与えることができる。指摘、アドバイスをポジティブに捉えらるようになるとも言えるだろう。
ディベートでは発言に対して必ず反対の意見が出る。どうしても日本では反論が出ることはネガティブなことと捉えられがちである。ただ、義務教育のころからディベートを学ぶ海外の方々などは、自分とは違う考えを持ち、それを発言してくれる人に対して尊敬をする、という日本とは大きく違う文化を持っている。それは「よりよい結果へと導いてくれる、新たな視点、より広い視野持つ機会」と捉えているからだ。指摘をされたときに心折れてしまうのではなく、「そういう考えがあるのか!」とポジティブに捉えるマインドの醸成に繋がるのがディベートなのである。これは、どこにいようとも必要なマインドセットではなかろうか。
河原崎講師の特徴は、高密度、ハイスピードに、学んだストラクチャーを使って、どんどん実践していくセッションだ。ストラクチャーを学ぶことで、英語のレベルがあまり高くなくともプロフェッショナルなディベートをすることができ、チームで行えば、チームビルディングにもなる。また、副次的ではあるが、勝敗がつくゲームのため、参加者の闘争心に火をつけ、モチベーションを高めるきっかけづくりにもすることができる。海外を渡り歩くビジネスパーソンの新たなステップとしても、これからグローバルな世界へと足を踏みいえる人のファーストステップとしても最適なセッションと言えるのだ。
ディベート力の向上は、ロジカルかつ説得力のある発言ができるようになる、自信がつく、周囲から尊敬されるという好循環を生み出す。それが、結果としてグローバルな世界での日本人のプレゼンスを高める。刻一刻とめまぐるしく変化するグローバル社会の中で、日本のビジネスパーソンが更にはばたく鍵はディベートにあり。そこに気づかせてくれる研究会となったようだ。