グローバリゼーションとその流れへの企業のかかわり方は、当然であるが、各社それ
ぞれ似て非なるものである。
その企業のグローバル化のフェ-ズやその時のトップの戦略によって、どの地域の優
先順位が高いのか、M&A、R&D,投資、人事制度、人材育成(国内とローカル)
など、トップとしては打たなければならない手は多岐にわたる。
近年、大手企業では社長が年頭あいさつでグローバル戦略の重要性を訴え、グローバ
ル人材育成にも言及する頻度が高くなっている。しかし、各社とも実行するプロセスで苦労
する。グローバル人材の定義、どの階層にどのような研修を行うか、国内で行うか海
外も考えるか、ローカル人材のグローバル人材化をどうするか、など課題は多い。
先週金曜日に、弊社クライアント(業界トップ)のグローバル人材研修(1年間)
のメンバーに、その企業の社長から直接語りかけるセッションがあり私も参加させて
いただいた。
M社長の話はわかりやすかった。現在会社がグローバル競争においてどんな状況なの
か、どの地域に今後力を入れるのか、なぜそう考えているのか、社員に何を期待して
いるのか、などわかりやすく、そして一方的ではなくインタラクティブに対話形式で
行った。
このような機会は非常に重要である。特に今回は研修がスタートして2カ月目であ
り、タイミングも絶妙である。
M社長にセッションの後お話を伺った。
若いころのお話をお聞きしたところ、ご自身はビジョン型であり、白紙に絵を描くこ
とが好きだ、とおっしゃられていた。
そして、その思いが強いからこそそれをすぐに実行に移す。
何度も大きな障害にぶち当たりながらも、考えに考え抜いて、道を切り開いていかれ
た。
構想力はそこでさらに磨かれていったと想像する。
私が提唱しているグローバル人材の中核の要素はビジョナリーシンキング(ひらめき
と構想力が相乗効果を出している状態)と一致する。
常々思うのだが、人材育成がうまくいかないのは、『制度作って魂入れず』だからで
ある。
参加するように指示されただけの研修生とマニュアル通りに内容をこなす講師で行う
研修は味気ない。
ただ時間が流れるだけでそこには思いもなく、成長もない。
今回はトップが本気で今後を背負う人材に熱きビジョンを持って語りかけるという、
『制度作って魂入れる』貴重な現場に立ち会えた。