布留川 勝の人材育成の現場日記

海亀と昆布

2008/08/10

エッセイ

『布留川さん、日本では海外留学組のキャリアはどうですか?企業は高く評価しますか?』と質問された。私は、まだ蘇州にいて、若手海外中国研修プログラムの開発のリサーチを進めている。質問してきたのは、リサーチ中にお会いしたイギリス留学組で政府系機関に勤めるエリックさん(中国人)である。彼は典型的な海亀と呼ばれる人物である。中国では、海外に留学して中国に戻ったエリートを、海亀(成功組)と昆布(成功に至っていない組)に分けて表現している。以下その解説である。

(抜粋)→http://blogs.yahoo.co.jp/hirochina55/43375454.html

”海亀”とはいわゆる海外に留学して中国に戻り、起業などで成功を収めた人々を指す。
「海帰」が本来の言い方だが、発音が同じなので”海亀”の産卵になぞらえてこう呼ばれる。
これに対して”海待”という言葉がある。
海外から帰国したが仕事が見つからず、”待機”を余儀なくされるエリートたち。
これを”海待”と呼び、これは中国語では”昆布”の発音と同じだ。ゆらゆら漂う様が言い得て妙。

この問題の本質は国を問わず同じである。日本人でも留学組やMBA取得者にも、『キャリア勝ち組と負け組』は存在する。トップ大学卒がみな成功していないのと同様である。また、その状態も永遠に続くことが保障されているわけでなく、いつ逆転するかもわからない。
学歴、職歴や留学経験はプロセスであり、その結果得た経験、知識をもとに発揮能力化したものが実社会ではその時点で評価される。それは、当然であり、そうでなければ学歴や職歴の劣る人は努力する意欲を失う社会になってしまう。

0a11365c.jpg日本における代表的海亀は海外(特に米国トップ10)MBA取得者であるが、最近は企業も「MBA退職問題」があるので派遣を見送っている。企業派遣海亀は激減し、個人での留学も10年前と比較すると激減しているようである(前回ブログで紹介した留学コンサルタントのAdrian氏情報)。

冒頭の質問に答えた。「エリックさん、日本ではグローバル人材はとても不足しています。ただ、日本のビジネスにおいて、過度に米国流のMBA的なやり方を押し付けると嫌われる場合もありますね。アジア的、欧米的な価値観や仕事の進め方も両方理解し、俯瞰できるグローバルな視点を持ち且つ行動力のある人材は引っ張りだこですよ。」

今日はこれからプログラムリサーチのため上海浦東空港からマニラに向かう。前回マニラを訪れたのは10年前である。どのように変貌しているのか楽しみである。

写真は、上海の風景。まるで銀座のような街並みのところから少し歩くと突然このような風景になるところに魅力がある。少しずれて写らなかったが、タバコを売っている女性の近くには2メートル位の台車にスイカをたくさん積んで売っている年老いたご婦人がいた。オリンピックを機にバッシングを受けている中国だが、庶民は素朴で心優しい人が多い。

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