布留川 勝の人材育成の現場日記

ヒラリー・クリントンのメディアスキル

2009/02/19

コミュニケーション

Hilary今週、ヒラリー・クリントン国務長官が来日し、その1日を追うニュースを見た。ちょうど、中川昭一前財務・金融相の醜態が頻繁に画像で流れているタイミングだったので、そのメディア対応の巧拙(それ以前の問題でもあるが)がより鮮明だった。

米国の政治家や経営者には、メディアトレーニングという、TV,新聞などのメディアに効果的に対応するためのプログラムがありよく使われている。メディアトレーニングのプログラムでは、難易度の高い質問、例えばその人物が最も聞かれたくないことを挑発的に浴びせかけ、それをビデオ撮影する。そして、その様子を本人がトレーナーと一緒に見て、まずい部分を修正していく。ロジック、ジェスチャー、服装などすべてから、受け手がどのように感じるかがチェックされるのだ。

簡単に言えば、その人物が頭が切れて、正直で、専門性のある人物であるように見えるよう作っていくのである。もちろん、本人がまったくその正反対であれば、作りようがないが、非常に優れた人物でもそれをうまく表現できない人も多い。
日本では、特にそのように自分をことさらよく見せようとすることに一種の抵抗を感じる人も多く、メディアトレーニングは意外と知られていない。

弊社でも、エグゼクティブコーチングのプログラムにメニューとして持っているが、受講希望は意外と少ない。

メディアをうまく使いきる政治家に中曽根康弘氏や小泉純一郎氏がいる。麻生首相は、一見そのように見えたのだが、言動にぶれがありすぎて信頼を失ってしまっている。

中川昭一前財務・金融相の実績について私はコメントするほど詳しくはない。しかし、政治家として資質がないわけでもなく、日本のために必死に戦ってきた政治家の側面もあるはずである。それが、今回は気の毒なくらいの醜態を全世界にさらしてしまった。
ニューヨークにいる娘から、「YouTubeで見た。日本人として恥ずかしかった。」という電話があった。このように日本のTVなどにすぐにアクセスできない海外にいる日本人も、YouTubeにアクセスしてその画像を見てしまう。インターネットというメディアは、このような失敗を増幅して広めてしまう恐ろしさがある。

それにしても、ヒラリー・クリントン氏のメディア対応は隙がなく見事であった。飛行機から降りる場面の笑顔、服装、街頭で、一般人からの「昨日はよく眠れましたか?」という質問にもわざわざ振り向いて「とてもよく寝れたわ!」と満面の笑顔で答える様子などを見ていると、常にカメラを意識しているのがわかる。映像というメディアのパワーも恐ろしさも熟知している。

日本の政治家にも経営者にもこのようなグローバルレベルの、メディアに対するセンシティビティがますます求められている。

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