一昨日、ハーバードビジネススクール(HBS)の日本リサーチセンター長である佐藤信雄氏の講演に行ってきた。
「ケースメソッドでリーダーシップを養う ~ハーバード・ビジネス・スクール最前線~」というタイトルである。
個人的にも佐藤氏と日本企業における幹部育成に関しては意見交換をさせて頂いている。
HBSにはLynton Hayes氏に何度も弊社のグローバル人材育成研究会で講演頂いているが、次回はぜひお二人にG研メンバーと直接意見交換をできる場にしたいと思っている。
今回の講演を聞いて改めて印象的だった点が2つある。
第一にHBSのMBA課程では、ケースを2年間で500回行うということである。
ご存じの通り、ビジネススクールで使われるケースには「正解」がない。
そして、現実世界と同じく「不完全な情報」しかない。
その中で、90人の同期と共に、自分ならその立場においてどうすべきかを考え、実行プランを考える。これを何度も繰り返す訳だ。
「答え」を提示するのではなく、なぜその考えに至ったか、思考プロセスを出すことが重要である。
そのプロセスを500回と繰り返すことで、様々なジレンマの中で、決断を下す力を持ったリーダーとしての基礎体力をつける。受け身で学んだ知識はすぐに陳腐化するが、この反復練習により得た決断力と行動力は、10年後、20年後にも生きる。
第二にHBSのMBA課程では、リーダーとしてのKnowing(知識), Doing(行動), Being(あり方)のバランスを見直しているという事実である。
金融危機における反省から、よりリーダーとしてのモラル、謙虚さ、価値観を重視した教育にすると同時に、教室を出て、新興国でのフィールドワークなどを組み込むなどの改革を行っている。
ケースメソッドでは、知識を教えている訳ではないが、やはりクラス内のことであり、現実に行動することでの気づきは大きい。
リーダー育成も変わりつつある。
しかし、一点気になったのは、日本企業の経営陣についてである。
HBSのリサーチセンターでは、HBSのMBA課程やエグゼクティブエデュケーションはもちろん、世界各国のビジネススクールで活用されているケースを作るためのフィールドリサーチを担っている。例えば、企業の経営者や幹部にインタビューをすることで、ケースの材料となる彼ら、彼女らの決断が求められるある状況下での「ジレンマ」を引き出す訳だが、佐藤氏曰く日本企業の経営陣や幹部はこの「ジレンマ」を感じている人が少なく、引き出すのが難しいことが多いそうだ。
この意味するところは、サラリーマン経営者として決断をしているため、それほど苦しみながらの決断、主体性を持っての決断を下していないリーダーが多いということだろうか?
決してそうは思いたくはないが、現状を見ているとそう思わざるを得ない事例も多々ある。グローバルで戦うことが増々求められる中、不安である。
今後のグローバル人材育成研究会(G研)においてもリーダー育成、そしてビジネススクールのエグゼクティブエデュケーションの活用について、より積極的に考えていきたい。
次回9月19日(木)はカーネギーメロン大学のビジネススクール、Tepper School of BusinessのCarnegie Bosch Instituteの代表, Ms. Sylvia Vogtをお招きし、「Leadership Beyond Border」というテーマでお話し頂く予定だ。ボッシュ社がスポンサーとなっていることもあり、技術系企業のリーダー育成に強いのが特徴だ。
詳細はこちらから
http://www.globaledu-j.com/hrd/seminar_report/seminar_91.html
また、11月14日(木)はロンドンビジネススクールよりエグゼクティブエデュケーションのディレクターであるAdam Kingl氏が登壇予定だ。
ぜひお気軽にご参加頂きたい。