企業のグローバル人材育成に携わって20年が経過した。
短期で成果を出しやすいグローバル人材育成としてはまず海外研修が考えられる。この20年間、私自身コンサルタントとして多くの企業における海外研修制度の構築に携わってきた。また同時にカウンセラーとして多くの参加者も見てきた。そこから感じた、人材の傾向について話したいと思う。
その前にまず、企業の海外研修制度から話すと、MBA, MSなどの学位を取得するコースを持つ場合と、学位取得ではなく特定分野におけるマネジメントスキルや語学力、視野を広げることを目的としたNon-degree(学位ではなくサーティフィケートなどを取得する)コースを使う場合がある。後者は、当社で言えばニューヨーク大学の「Global Certificate(http://www.globaledu-j.com/g/g52.html)」 がそれにあたる。
各企業の海外研修制度の状況を見ると、学位取得できるプログラムとできないプログラムのいずれか一方だけでなく、両方を用意する場合もあるが、一般的にここ4-5年は、前者は激減し、後者が増えている傾向にある。
前者が激減している理由は、以下の3点にまとめられる。
1)学位取得後の退職問題(特にMBA取得者)。
2)組織への波及効果が見えにくい(少人数の点展開のため)。
3)期間が2年と長く、トータルコストが高い。
また、実際には多くの場合、入学のためにはTOEFL、GMATなどの入学資格において高いスコアが求められるため(特に有名校での)学位取得への道は険しい。そして、研修制度としては、一応門戸は開かれているように見えるが実態としては4-5年に1名程度の選抜ということも多い。
しかし、そんな中で今も昔もあまり変わらないのが、企業の海外研修制度における「MBAにこだわる人、こだわらない人」の傾向である。
私や当社コンサルタントが対象者と個別にアセスメントや学校選びのコンサルティングを行う際に、ホンネを聞くことができる。そこでよく感じるのが、「実はどうしてもMBAを取得したい」という人たちに見られる「ある傾向」である。これはあくまで傾向であり、全員に当てはまる訳ではないことをおことわりしたうえで書かせていただく。
そのある傾向とは「自立していない」「自分に自信がない」である。自分に自信がないから会社のお金でとりあえず「MBAを取得しておく」という将来への保険のような感覚の人が多いのである。
もちろん本気で会社を背負って立つという気骨のある人材が、その目的のためにハーバードでMBAを取得したい、という場合もあるがそれは本当に稀である。
企業側から見て本当に投資効果のありそうな人材は、学位よりその与えられた機会をいかに活かすかを最大の関心事としている。そうした人材はカウンセリングにおいても、妥協せずに与えられた期間と予算内で最高のプログラムをつくろうと目的意識が明確であるため、当社カウンセラーへの要求も高い。そうした人材からはいかにも仕事ができそうな印象を受ける。人望も厚いのが想像でき、実際ご担当者からの評価を聞くと会社へのロイヤリティーも高いことが分かる。
このような人材は、積極的に研修に参加するため、知識面以外での多くの学びと気付きを得る。
そして、コースが終了すると帰国後すぐに会社に来てくれて、目を輝かせて私たちに海外での体験談を語ってくれる。
私や当社コンサルタントには、この仕事のやりがいを感じる瞬間である。そして、ますます海外研修制度における「人選の重要さ」を再認識すると同時に、この将来の幹部、役員候補のグローバルリーダー化のサポートに関われたことに深く感謝するのである。