布留川 勝の人材育成の現場日記

5月27日(月)に第183回G研「人生100年時代を見据えた40代・50代キャリア:社歴の長いベテラン社員が“負債化”せず“資産”として生まれ変わるには」を大阪にて開催した。いろいろな媒体を通してお申込みいただき、ほとんどが初めてご参加いただくお客様であった。

3/7(木)東京にて同じテーマにて研究会を開催した際も数多くのお客様にお越しいただいたが、引き続き注目度の高さを感じた。

40~50代の活性化がカギ

まずは自己紹介も兼ねて「なぜ今回の研究会にご参加いただいたか」を発表いただいたが、参加の課題様々であった。

「社内は年功序列が強い。給料高い40~50代がボリュームゾーンとなっており、いかに活性化するかが課題」という企業様もあれば、

「逆に年功序列を崩したことにより、次に上がるはずだった40代のモチベーションが下がっている…」というもあった。

会社の制度・状態は様々でも、「40~50代のキャリア」日本企業の課題となっていることを改めて実感した。

日本の雇用環境に変化の兆し

前半のパートでは私のファシリテートで、「100年時代のキャリア設計」をテーマにディスカッションを開始させていただいた。

日本の雇用環境はここにきて変化の兆しを見せている。周知の通り、経済界から「終身雇用を守るのは難しい」との発言が相次いでいる。社会的影響力のある地位にいる日本人の「難しい」 と言う表現は英語では、ほとんど” impossible “近い場合が多い。終身雇用は、社員を簡単に解雇できるシステムより、より人間的であり、それがあったからこそ今の日本の企業の躍進がある。ただ、その制度に依存する社員が多くなりすぎたから支えられなくなってしまった。

解雇規制・ジェネラリスト養成・60歳リタイア、この日本社会の根幹を成していた制度が近く大きく変わる可能性を予感させる。

今朝のワイドショーでは、対案を出さない評論家が「老後資金は2000万円はけしからん」と煽っていた。けしからんといっても、事実は事実なのであれば、それをベースにどうするか考えなければならない。

War for Talents時代の優秀な人材

このまさに「変化の時代」に40~50代は日本企業にとってのアキレス腱となるなぜか?世界的に優秀な人材の獲得競争「War for Talents」激しさを増しているからだ。少子高齢化に伴い、人材難に陥る日本企業はますます増えるだろう。

今後海外から様々なタイプ(知識・単純労働)の人材が流入する事も想定されており、「日本で採れないなら海外から採ってくればいい」考える方も多いかもしれない。しかしそれはあまりにも楽観的である。

あなたが優秀だと思う人材をイメージして欲しい。

海外にいる優秀な人材は、人として魅力がある(一緒にいて刺激的で楽しい)、専門性が高く仕事ができる、英語力はビジネスで使えるレベル(そもそも他国のホワイトカラーでは英語ができるかどうかの議論は終わっている、できて当たり前)であり、グローバルスキルも鍛えている。そんな人が、仕事のパフォーマンスではなく、年功序列によって給料が決まり、独特の企業文化が強く、日本人(主に男性)が中核となっている日本企業と、国籍も性別も関係なく、評価制度も整備され、実績次第で高い給料が保障されるグローバル企業どちらを選ぶだろうか?

またそれに加えて、ASEANなどの新興国も、高齢化問題の深刻度も増してきている。また経済成長も著しく、5年から10年の間に徐々に日本にやってきて働くメリットがだんだん薄れていく。

では日本国内で人材を獲得できるか?前述の通り少子高齢化によりますます獲得は難しい。

であれば今いる人材、特に社内での存在感が強く、若手にとってのロールモデルとしての存在も担う必要のある40~50代の活性化は避けては通れないのである(もしくは優秀な外国人のにとっても魅力的な企業に変革するか)。また今後定年退職する年齢が伸びる事を考えると、その存在は大きくなる一方で「定年まで逃げ切る」事は困難を極めるであろう。

ではどうすればいいか。本人たちに「逃げ切れない」事を認識して「変わってもらう」しかないのである。

「ダメ出し」で自分を調整する

今回はその具体的な方法のひとつとして、当社パートナー講師の脇田講師にお話しいただいた。昨今組織として、「心理的安全性」を持つことが重要と指摘されているが、個人として周囲の人に「心理的安全性」を与えることができるかどうか、という視点である。

そこでキーワードとなったのは「ダメ出し」である。ここでいう「ダメ出し」とは、「建設的なフィードバック」を指す。

どうしても、人間は年を追うごとに、周りから指摘を受けることは少なくなっていく。20代の頃は何度も注意されたようなことでも、30代、40代、50代と年を重ねると、周りは遠慮し何も言わなくなっていくものだ。そのような「ダメ出し」が少なくなっていくゆえに自分が「普通」と考え、どんどん視野が狭くなってしまう人はどうなってしまうだろうか?「ダメ出しされる事」をメリットに感じ、「されなくなった」ら「されるようにする」ように周りに働きかける。そうして多角的な視点で自分の考え方を調節していくことが、今後ますます重要になってくる。こちらの方が本人にとって圧倒的にプラスなのである。

脇田氏の話を聞いて思い出した話がある。有名歌舞伎俳優が、舞台に入る直前に弟子から衣装の乱れを指摘された。その乱れは演出上わざとやったものであったが、あえて「ありがとう」と言って直すふりをした。その理由は、もし本当に自分の気づかないミスがあった場合、周囲からいつでも気楽に指摘してもらいたいからなのである。

他者の視点を通して自分を見つめる

研究会では、自身のものの見方を数値化するアセスメントを活用したワークを参加者の方に体感していただいた。このワークの面白いところは「みんなどんどん夢中になっていく」ところである。

自身のものの見方を相手と共有するため、ワーク中にたくさんの気づきが得られる。「こんな考え方もあるのか」「なんでそう考えるのか?」など、エピソードを通して話していく。どんどん室内のボリュームが上がっていった。そこで他者の視点を通して自身を見る事で「他人の意見がいかに重要か」という事に気づくのである。

ワーク終了後、参加者の方から「自分は50代で社内のモチベーションを上げたいと思って参加したが、このワークを通して自分自身の変化も感じている。『40~50代は戦力化できるな』と実感した」というお言葉を頂戴した。このセッションの有効性を表す力強いお言葉である。

燃える40-50代を増やす

先日、別の脇田講師のプログラムでもある受講者の方から「50代は逃げ切れない。変わるしかない」という発言も出ていた。

当社としても、ぜひ今後「燃える40~50代」が増えるお手伝いを続けていきたい。「逃げ切り」ではなく「成長」を考える人が増えれば、この国の未来はきっと明るくなるはずである。

次回、東京では6/20(木)に「人生100年時代、これからの人材育成担当者の“役割”とは?」と題して、ご担当者様同士に語り合っていただく会を予定している。
大阪では7/4(木)に「成功事例から学ぶ!これからの”グローバル人材育成”検討会」と題して、当社専務福田聡子より成功事例を紹介しながら、一緒に変革の時代に求められる“グローバル人材育成の役割”について考えていきたいと思っている。
どちらもインタラクティブなセッションを通して社外での情報交換・ネットワーク構築をしていただける場としてもぜひご活用いただきたい。

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