INTERVIEW 事例紹介
ロンドン・ビジネス・スクール London Business School 様
海外ビジネススクール
目次
ロンドン・ビジネス・スクールは、Financial Times等のランキングで常に上位にランクされるトップビジネススクールです。
布留川:今回の対談では、ブレグジット (Brexit) の影響や、日本企業の人と組織の課題をどう見ているか?についてお伺いしたいと思います。
「変革をリードする」という、LBSがもともと力を入れてきた分野については、ブレグジットを経験したことでより深い気づきを促せるようになると思っています。ブレグジットは、このような前例のない、劇的な変化が起こった時に、人々がどのように考え対応するのかを示す生のケーススタディになるでしょう。組織のアジリティをどう高めるのか、という点でも多くの示唆があると思います。未来を予測することは難しいですが、”expect the unexpected” (予測できないことが起こることを予期する)という世界に我々は生きていることを自覚すべきです。
例えば、EU残留派の人々は「デイビット・キャメロンが正しかった」、「私たちはEUに残るべきだった」と言います。しかし、デイビッド・キャメロンは十分なリーダーシップを発揮しなかったため、選挙に勝利することができませんでした。EU残留派にとって、彼は「正しい」主張をしていたにも関わらず、彼は自分の影響力を使って、伝えるべきメッセージを適切に伝えていなかったのです。
繰り返しになってしまいますが、数年後にはよりブレグジットの影響を深く分析出来るようになっていると思います。
布留川:
Adam: LBSの特徴は実行力、インパクトに重きを置いていることだと思います。多くの場合、エグゼクティブ・エデュケーションに来るのは企業の変革を促すためです。ただビジネススクールで学ぶだけではなく、その後、どう組織内で変革を実行していくのか、その実行力を重視しています。アメリカとヨーロッパのビジネススクールの大きな違いは、ヨーロッパのビジネススクールの方が真の意味でグローバルということです。もちろん、アメリカのビジネススクールにも多様性はありますが、やはりアメリカ人が多いのが現実ではあります。
Mary: 実行力を高めるため、LBSでは教授とは別に学びの専門家としてのプログラムディレクターを置いています。どうしたら人がより深く学び、より現実社会にインパクトを与えられるのか、メソドロジーも含め、プログラム構築の際に議論しながら作っていくことで、プログラムにより現実味が出てきていると思います。目的を達成するために、どの専門分野のどの教授のどのプログラムを入れるべきか、どんな企業訪問をすべきか、それをクライアントのニーズを見極めながら、周囲を巻き込み作り上げていくのがプログラムディレクターです。
Adam: プログラムをグローバルスケールで展開できるのもLBSの特徴だと思っています。例えば、4つの大陸にまたがる2,000人が参加するプログラム、しかも、毎月新しい人が入ってくるような状態でプログラムをどう構築し、運営するのか、というのは具体的なノウハウが必要です。プログラムの大規模なグローバルロールアウトが出来る、という点は多くのクライアントから支持されている点だと思います。
布留川:いま、日本企業では、年功序列で上がっていく給与と比較してパフォーマンスが上がらない社員の存在が組織的な課題になっています。そのような人が上のポジションにいると、下にいる中堅・若手社員にも悪影響を及ぼし、組織的な全体の生産性が下がってしまうからです。これは、終身雇用・年功序列が生み出す弊害だと思っています。イギリスはアメリカと比べると解雇規制が厳しいですが、日本ほどではないですよね。このような日本の現状についてどうお考えでしょうか?
Adam: 働かない中間管理職を解雇することは出来ないとしても、彼らを再配置することは可能だと考えています。例えばマネージャーとしての能力がなかったり、マネージャーとして新たに学び成長する意欲がないと思われる場合、入社当初の配置を見直し、チームではなく個人で貢献できる職務に置き換える、そして若くてグローバル志向が強くポテンシャルがある人材をマネージャーポジションに昇進させるといった具合です。若い社員でも部署や会社の舵を取ることは十分可能だからです。
Mary: ロンドン・ビジネス・スクールの教授でもあり、日本でも大ヒットした書籍「LIFE SHIFT(ライフ・シフト)」の著者であるリンダ・グラットンとアンドリュー・スコットが素晴らしいことを言っています。Age is not stage、年齢はステージではないということです。例えば、「私はある企業の部長です」と自己紹介した時、今までの場合は、その人の年齢が推測できていました。つまり、人生のどのステージにいるかによって、年齢が推測できていたわけです。しかし、人生100年時代においては、人生のステージと年齢はイコールではありません。若くても能力があれば、会社や組織を率いることはもちろん可能ですし、逆に、何歳になっても学び直し、変化し続けることが重要なのです。これは日本だけではなく、高齢化を迎える世界共通の課題と言えるでしょう。
布留川: まさに今の日本に必要な視点ですね。本日はお時間を頂き、ありがとうございました。
ロンドン・ビジネス・スクール London Business School
メアリー・グリーン Mary Greene 、アダム・キングル Adam Kingl 様
メアリー・グリーン Mary Greene
シニア・クライアント・ディレクター
クライアントとの関係構築の責任者。特にグローバルクライアントのプログラムのデザイン、運営、評価を行うチームを率いている。
アダム・キングル Adam Kingl
ロンドン・ビジネス・スクールに長年ディレクターとして勤めた後、現在は、作家、ファシリテーターとしても活躍。2020年2月に"Next Generation Leadership"を出版。