6月下旬にコロンビアビジネススクールのFundamentals Of Managementに1日だけ参加してきたのでレポートしたい。このコースの副題は、Highlights of an MBAとなっていて、位置づけとしてはエグゼクティブ向けのMini-MBA的な内容になっている。
(http://www0.gsb.columbia.edu/execed/open/programs/fmba.cfm)
スケジュール(http://www0.gsb.columbia.edu/execed/open/outlines/fmba_grid.pdf)を見ていただくとわかるが、2週間でリーダーに必要な経営学のエッセンスを一通りカバーするようになっている。今回の参加者は15名で日本人参加者は4名(商社2名、総合電機1名、個人1名)であった。
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今回の参加者の国籍分布は正確には把握していないが、2004年の記録によると、参加者の国籍とポジションは以下の通りである。
日本9名、アメリカ8名、デンマーク3名、スペイン2名、スコットランド1名、イタリア1名、チェコスロバキア1名、ポーランド1名、ベルギー1名、オーストラリア1名、フィリピン1名、シンガポール1名
CEOやマネージャクラスが全体の70%。 非管理職者が参加していたのは日本のみ。
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当日は朝7時に私の宿泊しているホテルまで、担当のSteve Murphy氏が迎えに来てくれた。車中、コースの内容などレクチャーを受けながら現地に向かった。
場所はコネチカット州だが、マンハッタンから車で45分のDolce Norwalk(http://norwalk.dolce.com/)という研修施設である。サイトを見ていただければわかるが、研修施設としては周囲の環境も含め申し分ない。前々回にご紹介したスタンフォード大学もそうだが、米国のトップスクールは学習環境に対する配慮が行き届いていていつも感心してしまう。
私が参加したクラスは、Robert Bontempo教授による『Leading Transformational Change』という変革時におけるリーダシップをテーマにしたクラスである。クラスが始まるとすぐに教授より他参加者に私が紹介され、日本人参加者4名のグループに入るよう指示があった。このように日本人だけでグループを作るというのは稀なケースだ。
内容は、変革に対する圧力を計算式にして、いかに企業や組織の変革を戦略的に進めるか、である。計算式は、以下の通りである。
変革 = 不満足(D) × ビジョン(V)× プロセス(P)
この3つの要素の中でもっともパワフルなのが、不満足(Dissatisfaction)要素であり、これを分析し、現状維持のままだと将来起こりえる具体的な問題を予測し、リーダーとしてそれらを社員やメンバーと共有、共感、可視化できるかが重要、というという考え方をBontempo教授は強調する。
顧客からのフィードバック、新しい競合、ベンチマーキングなどの側面から変革の緊急度を明確にし、あるべき方向のビジョンと具体的な変革のプロセスを示すのがリーダーに求められる、ということをここで学んだ。私自身経営者として普段心がけてはいたものの、この計算式と不満足要素の使い方は大変刺激を受けた。
このように、普段なんとなく意識したり、気になっていることを計算式やチャートなどで構造化することによって、インスピレーションを受けたり、グループディスカッションで自分とは違う価値観や思考法に出会う。それが、ビジネススクール参加のメリットだろう。
それだけであれば、なにも海外で受講する必要はないが、上位ビジネススクールのエグゼクティブプログラムでは、グローバル企業からの参加者の多様な価値観や思考パターンをダイレクトに感じ、意見を戦わせることができる。多くの日本人参加者(特に本気で取り組んだ人達)の満足度が高いのは、そこを抜けてきたことによるDiversity(多様性)とスピードへの対応の自信がついたことでもあるのだろう。
ここ4回続けてグローバルリーダーの育成とエグゼクティブプログラムの位置づけについて書かせていただいた。
私の経営するグローバル・エデュケーションのミッションは『世界中の教育プログラムと企業、団体、個人の学習ニーズを結びつけ、グローバルに活躍する人々の能力開発を促進』することである。実際、私が出かけていったり、教育プログラムを持つ学校や個人が私に会いに来てくれたりすることを通して、日々新しいプログラムを探し続けている。米国のMBAやエグゼクティブプログラムに関しては、『どうせ学者の議論だろ、日本では使えないよ』というような懐疑的な見方や『MBAの退職問題』など課題があるのも事実である。
ただ、今回の米国出張で訪れたコロンビア大学、ニューヨーク大学、スタンフォード大学、UCバークレー各校におけるプログラムは、それぞれ私に『そうはいっても、日本人管理者のグローバルリーダー育成の研修機関としては現時点ではこれ以上のものはないな』と納得させるのに十分な質(プログラム内容、教授、参加者、施設)を持っていることを再確認した。また、それだけの経験のできる場でありながら、英語力の壁が大きく立ちはだかる現実も今後早急に対策を打つべきだと痛感している。皮肉なことに、多くのエグゼクティブプログラム参加者がプログラム終了後に猛烈に英語に取り組んでいるのだ。この問題についても今後このブログで私見を述べていきたい。
写真はSteve Murphy氏と教授陣