2020年最初のG研は、「激動の時代、変化に適応し組織変革を成し遂げるためのグローバル人材戦略!」と題して行った。
階層組織にがんじがらめになる日本
私のパートでは、「2020年:人材育成プライオリティ」として、私が考える
今の日本を考える上で比較として欠かせないのは、シリコンバレーと中国だ。
シリコンバレーは、世界中のトップタレントを集めており、非常に個性豊かで優秀な人材が、他者と協働しながらRespect & Collaborationを軸に新しいサービスをどんどん作り出している。Competitive (評価制度が曖昧ではなく優秀な人、貢献度の高い人が報われるシステム)な文化の中で、会社をあたかも大学であるようにキャンパスと呼び、働く人たちがクリエイティブになる環境をちゃんと提供している。
中国は、社会主義×市場経済×テクノロジーをベースに、BATHといわれる巨大IT企業を生み出している。この一見矛盾した3つの要素を組み合わせる事は、多くの識者から長続きするわけがないとみられていたが、今のところ多くの課題を抱えながらも前に進んでいるように見える。Stanford、UCバークレー、カーネギーメロン、ハーバード、MITなどの名門大学を卒業後、GAFAなどで修行を積んだ中国人ITトップ人材を中国本土に帰国させるための政策(中国政府からのインセンティブがある)は、中国にとってはとても有効な戦略である。それに加えて人材紹介会社も年収の高い中国人人材を米国企業から中国企業へ転職させることで大きな利益を上げている。米国に留学し、シリコンバレー企業で活躍したトップIT人材が、中国に戻りBATHで活躍したり、起業したりする新しいシステムが出来上がりつつあるのは、米国にとっては苦々しい出来事だろう。中国の優秀な人材に、奨学金まで出して博士号を取得するまで支援し、中核のノウハウがライバルの中国に渡ってしまうのだから。ただ、中国から見てみれば、自国の優秀な人材を有効活用して、米国企業に貢献してきたのだから、十分に義理は果たしたと見えるのかもしれない。こうした人材が海亀と呼ばれている事は以前にもこのブログに書いたが、人には様々な価値観があり、いくら大金を積まれても言論の自由が制限される本国に戻りたくない中国人も多く存在する。一方で、多少の自由が制限されても、自分自身の技術や能力を渇望する14億人の中国人に貢献でき、かつ米国以上の収入を得られるチャンスが大きいのであれば海亀になりたいと思っても不思議ではない。
それに対して、日本はどうだろうか?人口減、少子高齢化をはじめとする多くの社会課題を抱え、また、企業組織も未だに階層型でがんじがらめで動きづらいことが多い(もちろん、変化の兆しはいたるところに見えるのだが、まだ大多数にはなっていない)。 そして、そのような組織にありがちな「現状維持型」人材をどうするのか?は大きな課題だ。このソリューションについては、次回のG研でキャメル・ヤマモトさんの新著「独習力」を取り上げてディスカッションさせていただければと考えている。
ただ、私は、日本企業が真の変革に取り組みさえさえすれば、つまり、終身雇用や年功序列、言語の問題、求められる人材の定義と育成、そして日本人男性中心の企業文化を変えることが出来れば、十分にグローバルな超優秀層を呼び寄せることができると信じている。そして、世界のトップ中のトップ人材が日本にやってきて、日本の優秀層が協働することで世界があっと驚くようなイノベーションが生まれてくる。それが日本企業の活路だと思っている。こんな夢のような話は、今の日本企業の現状を考えるとただの理想論にしか聞こえないが、前述したようにシリコンバレーも中国も現時点では、その理想を実現してしまっているのだ。事なかれ主義を続けるのか、痛みを伴っても変革を断行するのかが今問われている。
前回のブログに書かせていただいたように、今年の人材育成のプライオリティは3つある。
① 今すぐ求められるグローバル・変革・イノベーション・PMIのリーダー育成
② 30-40代の超Aクラス人材を上記①につなげる
③ 現状維持型人材の自立促進
研究会やこのブログでも積極的にこれらのソリューションについて発信していきたい。
修羅場を潜り抜けてきた「腹落ち感」
第2部は石坂聡氏に登壇いただいた。切れ味抜群でパワー溢れるセッションは、非常に説得力があり大好評だった。私との対談後の質疑応答では非常に多くの質問が出て、ご来場いただいた人材育成ご担当者様と時間が足りないほど、語り合っていただいた。
私が考える石坂講師の最大の魅力は、様々な話の中からエッセンスを瞬時に取り上げ、「意味あるストーリー」を紡ぎだすことだ。特に、これは幹部への提言を行うようなセッションで真価が発揮される。受講者が言わんとしていることを瞬時に正確に聞き取り、時には受講者自身が驚くほど、うまいストーリーと言葉にしてくれるのだ。そして、それを日英のどちらの言語でも不自由なく出来る。石坂講師は組織の様々な「変革」を率いてきた。もちろんのことだが、組織の変革は一人では出来ない。仲間が必要だ。では、どうやって仲間づくりを行うのか?それが石坂講師の言う「Strategic Big Picture(戦略的な大きな青写真)」だ。どう変わるのか?何を目指すのか?ゴールはどこなのか?皆がイメージできる大きな絵とストーリーを描くことで、人々の意識を揃え、変革を実行していく。それを長年実践してきたからこそ、エッセンスを瞬時に取り上げストーリー化することが出来る。
石坂講師のセッションを導入いただき、今回の研究会にもご参加いただいていた人材育成ご担当者様からも、「(受講者の)営業マネージャーが大きく変わった。腹落ち感がすごくある」とおっしゃっていただいた。この「腹落ち感」はやはり、自分自身が相当な修羅場を潜り抜けてきていないと出ない。改革を続けてきた20年ほどの経験の積み重ねがないと、人の納得感は得られないものだ。当日は、石坂講師の日本社会への熱い思いや、多国籍セッションのファシリテートで重視していることなども質疑応答含めてお話いただき、とてもホットな場だった。石坂講師の得意分野は、変革リーダーシップやステークホルダーマネジメント、チェンジマネジメント、経営会議のファシリテーションなど、人と変化のマネジメントだ。最近では、海外赴任前や赴任中のトレーニングやコーチングをお願いすることも増えている。海外現地法人のマネジメントで最も重要なのは、結局「人」だからだ。詳しくはぜひ当社にお問い合わせをいただきたい。
研究会後は懇親会も行った。研究会だけでは話したりなかったことを中心に、皆様にはネットワーキングの場としていただいた。多くのお客様お越しいただいたことを改めて感謝申し上げたい。
次回の研究会は、キャメル・ヤマモト氏をお呼びしての「破壊的新時代の独習力」特集。ディスラプションの時代、先輩のコピーは通用しない。どんな能力をどうやって身につけるのか?をテーマにお送りする。ぜひご来場いただきたい。
写真は、ハーレーで登場してくれた石坂講師、当社の福田と一緒に。