布留川 勝の人材育成の現場日記

大阪G研報告(138回)「日本語経営塾は投資が回収できない理由」

2016/12/17

グローバル人材育成研究会(G研)

選抜部課長

先日、11月1日に第138回大阪G研「グローバル研修を日本語でやってはいけない理由&危機管理の視点から考える!幹部層に求められる英語での「瞬発力」と「決断力」」を開催した。

大阪支店開設後、5度目の開催を迎えた大阪G研は今回もオープニング前から即席の名刺交換会があったり、セッション中の参加者間の議論が白熱し、時間制限を越えてもしばしば意見交換が続けられるなど、非常に大きな盛り上がりを見せた。

さて、第1部の私のパートでは、「グローバル人材育成の動向とグローバル人材が育たない理由」、そして解決に向けての提言をさせていただいた。

日頃より申し上げているが、グローバルで活躍していく次世代リーダーに対する教育は
日本語で知識を教えるだけでは不十分であり、少なくとも実践的、かつワークショップそのものを英語で行っていくことが必須条件である。

また、プログラム設計段階で目的が不明確、グローバル人材の定義も曖昧であれば、その研修が成功する確率は低くなる。
残念ながら「日本語で知識のインプット+英会話レッスン」をグローバルリーダー育成の研修メニューとして位置づけている企業は思いのほか多い。
そして、結果としてグローバルリーダーの育成が思うように進んでいないということが起きているのである。

1. 経営塾は英語で行わないと投資が回収できない
TOEIC500点の参加者がいるのに、経営塾を英語で行うのは無理である、という考え方がある。その結果経営塾は日本語で行い、英語力をカバーするために英会話レッスンを別立てでつけるという方法が一般的である。もし経営者候補をグローバルマインドとスキルを持ったリーダーとして育成するのであればこの方法は残念ながら失敗している。
リーダーシップや戦略、ダイバーシティーとイノベーションなど難易度の高い内容に関し、英語でディスカッションするから身に付くのであって、英会話レッスンで身に付くものではないのである。
逆に1年間の経営塾の80パーセントを英語で行い、役員への最終発表会を英語で堂々と行うことができるのが弊社の「グローバルリーダー育成コース」である。月に1回1泊2日のコースを11回行うのが標準であるが、受講者は1年間毎日英語の自己学習が課せられている。
毎日英語の自己学習を行っているという事は、なぜそれを行うのかを納得しているからである。英語は「やらされ感」を持っている限りものにすることできない。
選抜人材でも日々の激務の中でじっくりとなぜ自分がグローバル人材になるべきか、あるいはならなければならないのかを考える余裕はないのが現状である。しかし、大手企業の幹部が日本的な発想しかできず、日本社会で日本語でしか仕事ができないのであればグローバル市場を制することはありえない。
このコースにおいては私や 今回登壇のDavid Wagner講師を含む7ー8名の講師陣があらゆる角度から受講生を鼓舞し、視座を高くし、戦略的にものを考え、英語はすきま時間で自己学習するのが当然という人材に変容していくのである。

2. M&A後のリーダー育成
M&A後のリーダー育成を視野に日本人、外国人社員の次世代リーダーを対象としたプログラムが続々スタートしている。ビジネススクールによるカスタムプログラム、複数のビジネススクール教授人とのコラボレーションコース、国内のグローバル系ファシリテーターによるセッションなど、手法は様々ある。

3. 2017年は英語公用語化企業が続出の気配
英語公用語化に関しては、2017年に大きな動きが出てくる気配がある。もう特定の企業のものだけではなくなってきている。弊社はある大手製造業は英語公用語化に大きく踏み出すコンサルティングを行っている。実は1番の英語公用語化に踏み切る理由は中国である。日本語のできる中国人と英語のできる中国人両方を採用し戦力化することが、今後の中国マーケットで前進する大きな要素であるが、ほとんどの日本企業は、日本人社員が英語ができないため日本語のできる中国人のみを採用する。しかし、英語のできる中国人の方が優秀層が多くかつボリュームが大きい。その結果他国の競合企業との間に人材の質と量において差をつけられてしまうのである。
だから英語公用語化なのだ。

参加されたご担当者からは、グローバル人材育成の選抜研修を毎年行っているものの、なかなか育っていない理由に思い当たる節が多々あり、大変参考になった等のアンケート結果をいただいた。

第2部では、元NHKのテレビ講座の制作・司会者としても有名なDavid Wagner講師が登壇した。
彼との付き合いは、当社を設立した当時からであるため、かれこれ16年となる。

David講師のパートでは、「危機管理対応力」をテーマにご参加いただいた人事の方々に実施の研修で行うミニケースを体験いただいた。

訴訟、品質問題、SNSでの会社の悪い噂が流れるなど、変化する状況の中で、どのように対応するか、そして、その言動一つで、会社の存続の危機にすら成り得る状況をどのようにコントロールするかは、グローバル企業の幹部、マネージャーとして必須のスキルである。

今回は、セクハラをテーマに元従業員が訴えてきた場合、どのように危機を回避し、素早く決断を下し、解決策を導き出すことができるかを体験いただいた。

この日、セッション中にDavid講師が何度も言っていた言葉が印象的であった。
それは、“Key Questions need to to be asked in order to get right answer.” である。

会社の存続をも揺らがすような大きな問題が起きた時、幹部層に必要となるスキルは何か?

それは、まずは状況を整理し、正確な情報を掴んだ上で、問題解決の手助けとなる「戦略的な質問」をすることである。

日本人は質問することが苦手とよく言われているが、この状況を打破するためには、「戦略的な質問スキル」が大きなカギとなる。

では、どのような質問スキルが求められるのか?

Davidは、5W’s+2H’s(Who, What, Where, When, Why, How?,How much/many?)の中に、その答えはある。

以下例えば:

What do you know? 自分はどのくらいのこの危機に関する情報を知っているか?
What are the issues? 何が問題であるか?
Who is affected? 誰が被害を受けているのか?
Which facilities are involved? 誰がこの件に関わっているのか?
Who/What is causing this? 誰/何がこの問題を引き起こしているのか?
What remains unclear? どの情報がまだはっきりしていないか?
What are our priorities? 優先順位は何か?
What needs immediate attention? 今すぐに実行しなければいけないアクションは何か?
What can we wait? まだ現時点では実行すべきではない行動はあるか?様子を伺う必要のある項目/状況は何か?

これらの質問スキルを上手く使いこなすことで危機を最小限に回避することは可能である。また、これらの質問スキルは危機管理対応力のみならず、様々なグローバル環境下でも応用が出来る。積極的に質問をするということは、思考力を強化し、視座を上げることにも繋がるだろう。

どの企業も危機的状況に陥ってから対応するのでは遅い。危機が起きる前から、考えられる状況を想定した上で幹部やマネージャー層の英語での「危機管理対応力」を鍛えるニーズは今後、益々増えるだろう。

<最後にDavidと質疑応答の様子>

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