昨年以来、クライアント企業において、多国籍メンバーによる研修の実施が増えてきている。
内容は、1)自社のコアバリューについて 2)自社のグローバル市場における競争戦略 3)本社と現地法人・工場間のコミュニケーションの質を高める などが多い。
その際、やはり気になるのが『日本人参加者の参加度とその存在感』である。各セッションは、通訳なしの英語で行われるのが通常であるから、母国語を英語とする北米英豪からのメンバーが有利であるあることは否めない。しかし、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)に加え、シンガポール、タイなどのアジア人やトルコなど新興国のマネージャーと比較して、ダイアローグができない、意見が出ない、プレゼンテーションにインパクトがないという面では、日本人ビジネスパーソンは共通の弱点を持つ。
これは英語力の問題なのだろうか?
私は、この見方は偏りがあり事実ではないと考えている。もちろん英語力は重要な要素であるが、むしろそれ以前に、論理思考力・構想力、そしてそれらを適切かつ効果的に表現できるコミュニケーション力・異文化対応力が必要とされている場合が多い。また、『疲労感・やらされ感・苦手意識』の漂う日本人参加者が多いのに比較し、新興国エリート層からは、新しい戦略や方向性のシナリオ、そして新しい物語を提示できる、『前向き・主体的で・希望あふれる』変革期のリーダー・マネージャーが続々と輩出され始めている。彼らこそ、他者をインスパイアしモチベートし、組織を活性化できるグローバル化対応の人材のように見えてくる。
人材育成の現場ではあるが、これらの現象を目の当たりにした企業の経営陣や人事部は日本人社員のグローバル化のスピードが遅いこととキャリアへの危機感の欠如への問題意識を高めてきている。しかしながら、変化のスピードはまだ遅く、私自身、このままでは『高収入/低グローバルスキル』型日本人ビジネスパーソンの存在感の低下は、この先5年間でますます顕著になるのではないかと危惧する今日この頃である。
一方、悲観論だけはなく、ここ数年、『変化を楽しみ、グローバルな世界に自ら飛び込む』一部の新しいタイプの日本人ビジネスパーソンが勇気をもって『自分のグローバル化』に立ち向かい、痛みを伴いながらも自己変革を起こしている事例を垣間見ることも増えてきているのも事実だ。
この動きをさらに加速させることに日々知恵を絞っていきたい。